認知症ってどんな病気?物忘れとの違いもわかりやすく解説

福祉の話

はじめに

私は福祉の仕事に関わって20年になりました。その中で見てきたこと、感じたことをも含め、認知症について、分かりやすくお伝えしていきたいと思います。

 初めに今では認知症は多くの人が知っている言葉になってきたと思いますが、まだどのような状態の事を言うのか詳しくは知らない人も多いのではないでしょうか?例えばタイトルに認知症ってどんな病気?って書きましたが、認知症は病名ではありません!! ※次の項で説明します。

今回、このような記事を書こうと思ったのは、認知症は私を含め誰もがなり得るものです。そこで少しでも多くの方々に認知症について正しく理解してもらい、認知症になっても住みやすい社会になるようなお手伝いができればと思い記事にしようと思いました。

また福祉の仕事に関わって20年になるので、「認知症ケアで困ってる」「どう対応すればいいか悩んでいる」という方々にも体験談も含めて解決方法や認知症についてお伝えし、少しでも悩みが解決できるお手伝いができればと思っています。

厚生労働省の情報ではありますが、全国の認知症患者数(2022年推計)は、

443万人 さらに、認知症予備軍の人数は、およそ559万人合計すると 約1000万人

全国の高齢者が3600万人なので、4人に1人は、認知症または、認知症予備軍

さらに2040年には患者数だけでも1200万人を超えると予想されています。

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認知症とは・・・? 

さまざまな原因によって脳の細胞が死んでしまうなどし、脳の働きに不具合が生じた為、起こる障害。認知機能の低下が原因で日常生活全般に支障をきたす状態。(おおむね6か月以上持続している状態)と言われています。初めにお伝えしましたが、認知症は病名ではなく、脳の病気による認知機能の低下によって引き起こされる状態の総称ということを覚えておいて欲しいと思います。

物忘れ(生理的老化)と認知症の違いとは

まず初めに認知症といえば、まず最初に思いつくのは、物忘れではないでしょうか。「同じことを何度も聞く」や「ご飯を食べたことを忘れる」等、まずは「一般的な物忘れ」「認知症の物忘れ(記憶障害)」の違いを見ていきましょう。

物忘れ(生理的老化)認知症の症状
原因脳の老化脳の病気
状態体験の一部を忘れる体験の全てを忘れる
進行しない進行性で悪化する
自覚がある自覚が少ない
生活支障なし支障をきたす

一般的な「もの忘れ」

・カレーを食べたのは、昨日の昼だったかな~

・久々に会った同級の名前が思い出せない!誰だったかな?

・さっき使ったメガネは何処に置いたかな~

・あれ?何をしようとしたかな~

認知症の「もの忘れ」(記憶障害)

・「朝ごはんは食べたでしょ」って言われたけど、朝から何にも食べさせてもらっとらん。腹減ったなぁ~

・「まだ帰る時間じゃないので、ここにいてください」って言われるけど、ここは何処?わしは何しにここに来たんだったかなぁ~?

・「なんで来てくれなかったの。約束したのに忘れてたの?」って言われるけど、約束した覚えがないけどなぁ。

いかがでしょうか?お分かりいただけたでしょうか?

一般的な「物忘れ」は、例えば3日前に食べた晩ご飯の内容は覚えていないけど、食べたこと自体は忘れていないと思います。私達でも3日前の晩ご飯を食べたことは覚えていますが、何を食べたかは覚えていない(思い出せない)ことがあるのではないでしょうか。しかし日常生活に支障は特にないと思います。

反対に認知症の「物忘れ」は今朝、朝ご飯を食べたこと自体を忘れてしまいます。その為、ご飯を食べた後に家族に「何にも食べさせてもらっとらん」や「早くご飯を食べさせて」等、訴えるようになってきます。一般的な「物忘れ」は忘れたことに対して自覚はありますが、認知症高齢者の「物忘れ(記憶障害)」は自覚がある事は少ないです。

このように認知機能の低下が原因で日常生活に支障をきたすのが、認知症といわれる症状になります。

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認知症の当事者の気持ちを考えてみよう

認知症の本人に「自覚がない」は大きな間違い⁉︎

先ほど、認知症の人は物忘れの自覚が少ないとお伝えしましたが、私が認知症の人に関わってきたことで、感じたことがあります。認知症の本人に「自覚がない」のは大きな間違いではないか。認知症の症状に最初に気がつくのは本人ではないかと思うことがあります。

認知症の人が「何も分からない」訳ではないことは、みなさんもご存知だと思います。しかし、認知症の症状に最初に気がつくのは、ご本人であると考えたことがあったでしょうか。

「私は忘れていない」という言葉の背景には、誰よりも不安で、苦しくて、悲しい……。そんな気持ちがあるのではないかと思います。もし、そんな気持ちを抱えながら日々を過ごしている人が、あなたの側にいたとしたら、その気持ちに気づくことができるでしょうか?

初期の段階では、「最近物忘れが増えたな」「昨日のことが思い出せない」と本人が自覚して不安を感じることが多いです。しかし認知症が進行すると記憶障害や判断力の低下が進行し自分の症状への認識が徐々に薄れていくことがあります。

その結果、私は「何も問題ない」と言われる場合もありますが、これは症状の一部であり、本人がわざと否定している訳ではありません。

あの人は認知症だからと、分かっていないと決めつけず優しく声をかけ接して欲しいと思います。「最近、困っていることはない?」と本人の気持ちを聞くことで不安に感じていることに気がつける場合もあります。家族や周囲の人も本人が何に困っているのか観察し必要なサポートを考えていって欲しいと思います。そういった認知症の心のケアを行うことが本人の安心につながっていくことを当ブログに来てくださった、皆さまにはご理解いただければと思います。

※参考文献・資料 認知症介護基礎研修標準テキスト

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