認知症の中核症状『見当識障害・理解力・判断力の低下』とは?症状例・支援方法や留意点を紹介

福祉の話

1)見当識障害とは

・見当識障害の症状例

・支援の方法や留意点

2)理解力・判断力の低下とは

・理解力・判断力の低下の症状例

・支援の方法や留意点

3)私の体験談

前回もお伝えしましたが壊れてしまった脳の細胞が担っていた役割が失われることで起こる症状「中核症状」と言います。今回はアルツハイマー型認知症の主な中核症状である、見当識障害判断力の障害について説明していきたいと思います。

1)見当識障害とは

『時間』『場所』『人』、自分の置かれている状況を理解する力が低下します。

例)日にち、曜日、時間が分からなくなる

  慣れた場所や近所でも道に迷ってしまう。

更に進行すると…自分の周囲の人との関係も分からなくなり自分の子供に「お母さん」呼びかけてしまうこともあります。一般的には、この見当識障害は時間⇒場所⇒人の順理解する力が低下していくと言われています。

■見当識障害の症状例

•時間の見当識が低下すると夜中に外に出ていったり、誰かが入ってこないように昼間に雨戸閉めようとする。

•場所の見当識が低下すると、道に迷ったり、違う場所だと勘違いする事が増える。

•人物の見当識が低下すると、孫と子供だと誤って認識したり、家族でもない人を家族だと思い込んだりすることがおこる。

■支援の方法や留意点

・カレンダーや時計を使って日時が分かりやすい環境を整える。

・場所を理解しやすいように目印を貼ったりして環境を工夫する。

・こちらから名乗って関係性を理解してもらう。

※本人が時間、場所、人を自分で認識できるようなケアが必要

注) 「おかしな行動する」といった感覚で理解していると、認知症の人の困難さは深く理解できません。場にそぐわない行動にみえても本人にとっては正しいと思って行動している事が多く「間違えているのではないか」「誤ってしまったのではないか」と理解をする必要があります。

2)理解力・判断力の低下とは

自分の置かれている状況に応じて適切な行動をとったり物事を筋道立てて考えたりする事が出来にくくなる。また、物事の理解に時間がかかり、一度に複数の事を言われたり、行動しようとしたりすると理解が難しくなる状態です。

まとめると 

・考えるスピードの低下

・2つ以上の事が重なると同時に行えない。

・予定以外の出来事に混乱しやすくなる。

※その為、詐欺被害の危険が大きくなってきます。

■理解力・判断力の低下の症状例

・真夏にセーターを着たり、寒くても半袖のままなど季節にあった服装が出来なくなる。

・「寒いから気をつけてね」「トイレ大夫?」など曖昧な表現は理解が難しい。

・何か困った事が起きても、どうやって解決していいのか分からない。「水道が壊れた時に水道屋さんに電話する」事が分からなくなる。

■支援の方法や留意点

・難しい判断を要求する機会を減らす

・判断材料や選択肢を減らして判断しやすくする

・情報を簡潔に伝える。

※記憶障害や見当識障害などによって得られる情報が少ないので考える事も判断することも出来ない状況に置かれていると理解する

※思考力や判断力は残っている部分もある為、判断したり選択する機会が奪われないように、認知症の人が考え、判断する為に必要な情報を提供できるようなケアが必要

注)思考力や判断力の低下を「考えられない」「的を射ない」といった感覚で理解していると、認知症の人の困難さは深く理解できません。適切に考えたり判断したりする材料を自分でキャッチする事が出来ない結果、目的に沿った言葉や行動が表しにくくなっている状況であると理解する必要があります。

3)私の体験談

私が施設で働いていた時の話です。高齢者住宅で生活されていたおばあちゃんが、廊下で転んで骨折し手術・入院後住宅に帰ってきた時に今まで使っていた自室のトイレの認識が出来なくなり部屋の隅っこや廊下で排尿をされるようになりました。3ヶ月程度入院して認知機能が低下したのが原因だと思います。それでもトイレのドアに「トイレはここです」と大きな紙に書いたものを貼ると認識してもらえるようになったことを思い出します。

また、同じ高齢者住宅で生活されていた方は冷蔵庫に歯ブラシのコップや爪切り、くし等を入れていたおばあちゃんがいました。その都度、私達が確認し「元の位置に戻しますよ」と対応していましたが、何度も同じことをお互いが繰り返していたので特に冷蔵庫に入っていても大丈夫そうなものに関しては、そっと見守ることもありました。

※参考文献・資料 認知症介護基礎研修標準テキスト、認知症介護実践者研修標準テキスト

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