最近、聴いた本「硝子の塔の殺人」知念実希人 著

日々の出来事

1.はじめに

雪に閉ざされた山奥のガラスの館、そこに集まる奇妙な客たち。外界から断絶された状況の中で起きる殺人事件─。
この設定を聞くだけで、「あ、これは絶対に面白い」と思う人も多いでしょう。ミステリー好きにはたまらない「クローズド・サークル」ものの王道を踏みつつ、その構造を新しい形で裏切ってくれるのが知念実希人さんの『硝子の塔の殺人』です。
今回は、緻密な構成と読後の衝撃が話題を呼んだ本作を、ネタバレなしで紹介していきます。


2.本の紹介

読んだきっかけ

知念実希人さんの作品は、医療ミステリーや社会派のテーマが多い印象と聞いていましたが、
この『硝子の塔の殺人』は久しぶりに“本格推理”に挑戦したという話を聞き、興味を持って聴いてみることにしました。
表紙の雰囲気やタイトルの響きからも、「これは一筋縄ではいかないぞ」と期待が高まりました。


あらすじ

物語の舞台は、山奥に建つ「硝子館」と呼ばれる美しい建築。
そこに招かれたのは、招待状を受け取った数人の男女──それぞれが何かしらの秘密や事情を抱えていました。やがて雪が降り始め、外界との道が閉ざされた頃、最初の殺人が起こります。

閉ざされた空間、限られた登場人物、誰が犯人で誰が味方なのか分からない心理戦。
そして探偵役として登場する“あの人物”の存在が、物語を一気に異質でスリリングな方向へ導いていきます。
タイトルの“硝子”という言葉が示すように、この作品は美しさと脆さ、真実と虚構が交錯する物語なのです。


読んでみた感想

まず感じたのは、「これぞ現代版・本格ミステリーの到達点」だということ。
古典的な設定(雪山・密室・連続殺人)を踏襲しつつも、構成の仕掛けや人物描写が非常に現代的です。

登場人物たちの会話は自然で、どこかドラマ的なテンポがあり、
聴いていると時間を忘れてしまう──そんな没入感があります。

中盤から後半にかけての“真相の暴かれ方”には唸らされました。
読者が「そうくるか!」と驚く展開でありながら、きちんと筋が通っている。
伏線が見事に回収され、すべてが一本の線でつながる快感があります。


3.作品の魅力

『硝子の塔の殺人』の最大の魅力は、構成の緻密さとメタ的な仕掛けにあります。
単なる密室トリックやアリバイ崩しではなく、
「ミステリーそのものをどう読むか」という読者への問いかけが込められています。

知念さんは医師としてのリアリティを持ちながら、人間の心理や死への恐れを非常に繊細に描かれる作家さんです。
その筆致が、この作品では“フィクションの中の現実”というテーマに巧みに活かされています。

また、登場人物たちが“それぞれの嘘”や“作られた自分”を抱えており、一人ひとりの背景を知るたびに物語の印象が変わっていきます。

クライマックスでは、ガラスのように透き通った真実と、その下に隠されていた“人の本性”が露わになる瞬間に、思わず息を飲みました。

4.オススメ度


知念実希人さんの作品の中でも、特に完成度が高く、「本格ミステリー」としても「心理サスペンス」としても一級品。
東野圭吾の『白夜行』や綾辻行人の『十角館の殺人』が好きな人には、間違いなく刺さる一冊です。
読後にもう一度最初のページを読み返したくなる─そんなタイプの作品です。

5.まとめ

『硝子の塔の殺人』は、古典的な館ミステリーの要素と現代的心理描写が融合した傑作です。
単なる犯人探しではなく、「人はなぜ嘘をつくのか」「人を信じるとは何か」といったテーマが物語全体を通して静かに問いかけてきます。
雪に閉ざされた美しい塔で起きる事件は、緊張感と心理戦、そして深い人間ドラマが同時に楽しめる作品です。
ミステリー好きはもちろん、心理サスペンスや人間ドラマを楽しみたい方にもおすすめできます。

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