行動心理症状(BPSD)とは?まずやさしく理解しよう。パート1

福祉の話

1.はじめに

前回の記事で行動心理症状(BPSD)についてご説明しました。その中で、「行動心理症状(BPSD)ってどんなことを言うのか?」で簡単にご紹介しましたが、その症状はさまざまです。今回は、どんな症状が起こるのか、それぞれの特徴を紹介したいと思います。

行動心理症状(BPSD)の記事はこちら↓

2.主なBPSD (行動・心理症状)

■不安・焦燥

物忘れ(記憶障害)などの認知症の症状が現れ始めると、不安な気持ちを抱える利用者が増えます。特に失敗を繰り返したり、症状が悪化したりすると将来への不安を募らせるようになります。

周囲の対応や治療で不安が和らげば良いのですが、不安が続くとやがて焦燥感を持つようになり、いつも何かに怯えて、じっとしていられなくなります。ひどくなるとそれが介護抵抗や暴力などにつながることもあります。

また、反対に不安を受け止めてくれた人がいると、その人を信頼して異常に甘えるようになることもあります。

こんな症状が…

・眉間にシワを寄せて、何かに怯えるように不安におののく。

・じっとしていることができず、絶えず動き回る。

・「危険が迫っている」「ここから逃げ出さなくてはならない」と思い込む。

・「時間がない」「早く、早く」と焦る。

・見るもの全てが自分への攻撃に思える。

・ひどくなると自己防衛のために、介護抵抗や暴言・暴力といった症状も現れるようになる。

■心気・抑うつ

心気」とはいわゆるノイローゼ状態のことです。認知症の初期には、本人も異変を自覚しているので、病気への不安から心気的になり、さまざまな病院を受診して医師に長々と不安を訴えたり、いつもびくびくしていたりします。

心が不安定になると自律神経も乱れるので、冷えやむくみもといった症状も見られます。また、同じ理由でうつ状態になる人もいます。

ふさぎ込むようになり、家の中でじっとしていることが多くなります。動かないので疲れにくく昼夜逆転の生活になり、不眠からさらにうつの傾向が強くなります。

こんな症状が…

・自分の体や将来のことが心配で仕方なく、怯えている。

・ちょっとした物音にも敏感に反応する。

・何事にも意欲がない。

・家に閉じこもり、外出しない。

・ぼそぼそと小さい声で話す。

・顔色が悪く白っぽい。

・手足が冷たく、むくみがち。

■介護抵抗(暴言・暴力)

認知症の人の中には介護されることに抵抗を示す人もいます。これは、自分の置かれている状況や介護者の言葉が理解できなくて、「何をされているか分からない」と不安になるためです。

また、何が何だか分からないまま「突然服を脱がされた」「何だか分からない薬を飲まされた」など、嫌な記憶が残ってしまい、それが介護抵抗につながることも多くあります。特に着替えや入浴の介助など、体に触れられるのを怖がり、嫌がります。

認知症の人の不安を無視して、無理やり接触しようとすると本人は強い拒絶反応を示し、不安な気持ちを冷静に訴えることができないので、それが暴言・暴力につながることもあります。

こんな症状が…

・衣服の交換、おしめ交換、体位変換、入浴の介助などの時に、体に触られている理由が理解できず「嫌なことをされる」と思って抵抗する。

・薬を嫌がって飲まない。

・出された食事を食べない。

・時には介護者の手をつねったり、殴ったり(暴力)、罵倒したりすることもある(暴言)

■幻覚・妄想

「小さな人が見える」「家に知らない人がいる」などの幻視や「お母さんの声がする」といった幻聴などもBPSDの一つです。認知症によって脳の機能が低下していること、病気に対する強い不安などが原因となっていると考えられます。

虫やヘビなどがいるという幻視もよく聞かれる症状で、その場所を叩いたり、踏みつける動作が見られます。特に幻視はレビー小体型認知症によく見られます。

妄想はほとんど被害妄想で「お金を盗まれた」「悪口を言われた」などと訴え、家族や介護者など身近な人を犯人や加害者だと疑います。これも記憶障害などの脳の機能低下や将来への不安などが重なり起こる症状だと考えられます。

こんな症状が…

・亡くなった人が訪ねてきたと言う。

・いないはずの子どもや動物が見えると言う。

・自分が置き忘れた財布を「盗まれた」と騒ぐ

・嫁が浮気をしていると言う。

・周りのみんなが自分を攻撃しようとしていると怖がる。

■番外編「せん妄」とは

一般的にせん妄はBPSDに含まれませんが、認知症の人にもよく見られる症状です。私の経験上、認知症の人に限らず高齢者が病気の治療で入院した時によくせん妄状態になる方が多いように感じます。

せん妄とは、意識障害の一つで、認知症のほか脳卒中やパーキンソン病などの病気や睡眠薬や抗うつ薬などの薬の副作用でも起こると言われています。

半分眠っているような、半分覚醒しているような状態になるため、以下のような行動が見られるようになります。

・目がうつろで、宙を見つめている。

・話しかけても会話が成立せず、意思疎通ができない。

・何かにとり憑かれたように叫んだり、暴れたりする。

・突然ベッドの上で立ち上がったり、ウロウロと歩き回ったりして落ちつかない。

・実際にはいない人や虫、動物が見えると言う。

※せん妄状態のときは、本人には意識障害がある為、転倒したり、何かに体をぶつけたりして怪我をする危険があるので注意が必要です。また、せん妄は夕方から夜にかけて起こりやすいのも特徴です。しかし長くは続かず、朝になると収まり、本人は全く覚えていません。次の日も同じように繰り返すこともあります。

※参考文献・資料 『タイプ別で対応でよく分かる認知症ケア』

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