福祉をテーマにしたおすすめ映画①「父と僕の終わらない歌」

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🌟 おすすめ度

感動度 ★★★★☆ 父と息子の絆を音楽を通して描いた物語は心に響き涙を誘います
分かりやすさ ★★★★☆ 難しい専門用語や複雑な展開はなく、誰でも感情移入しやすいストーリーです
リアリティ度 ★★★★★ イギリスの実話をもとにしたノンフィクション作品です
総合おすすめ ★★★★★ 親子の愛情と別れの切なさをやさしく描いており、新しい認知症感を感じれる作品です

※簡単なあらすじや感想を含みます。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

作品概要

2025年5月に公開された映画『父と僕の終わらない歌』は、音楽と家族の絆をテーマにした感動のヒューマンドラマです。先日、ずっと気になっていたので映画館で観てきました。原案は、イギリスで実際にアルツハイマー型認知症を患った高齢男性が歌手デビューを果たした実話。その物語を日本・横須賀の町を舞台に再構築し、現代の家族が抱える「老い」と「記憶の喪失」、そして「再生」を描き出します。
監督は『ちはやふる』『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』などで知られる小泉徳宏。繊細な心理描写と温かみのある演出で知られる監督が、今作では“音楽が記憶を呼び戻す力”を見事に映像化しています。
主演は寺尾聰。息子役に松坂桃李、母親役に松坂慶子と、世代を超えた名俳優たちが共演。世代を超えて受け継がれる“音楽”と“想い”を、静かに、そして力強く描いています。

あらすじ

横須賀で楽器店を営む父・哲太(寺尾聰)は、かつて歌手を夢見ていた男だった。若い頃にチャンスをつかみかけながら、家族を守るために夢を諦めた過去を持つ。そんな哲太が、ある日「アルツハイマー型認知症」と診断される。徐々に日常の記憶が抜け落ち、家族の名前すらも思い出せなくなっていく現実。
息子の雄太(松坂桃李)は、そんな父の姿に戸惑いながらも、音楽を通じて父との絆を取り戻そうと決意する。父がかつて作りかけた曲を完成させ、再び人前で歌わせよう―それが、雄太にとっての「父との約束」となっていく。
母・律子(松坂慶子)は、二人を優しく見守りながら、家族の時間がゆっくりと終わりに近づいていくことを受け入れようとする。
やがて、忘れていく父と、諦めない息子の「音楽を通じた長い対話」が始まる。歌が記憶を呼び起こし、記憶がまた歌を紡いでいく―それは“終わらない歌”のように、静かに人の心に響いていく。

見どころ

この作品の最大の魅力は、「音楽」が物語の中心にある点です。認知症を扱う映画は多くありますが、本作では“音楽の記憶だけは最後まで残る”という実際の医学的な知見を、物語に巧みに組み込んでいます。
哲太が音楽を聴いた瞬間、途切れていた記憶が少しずつ甦り、家族の表情が一変する―そんな場面がいくつも登場します。特に、終盤で哲太がステージに立ち、自身の人生を歌に乗せて表現するシーンは圧巻。観客も登場人物たちと同じように、涙と笑顔でその瞬間を迎えることになるでしょう。

また、横須賀の街並みが映画全体を優しく包み込みます。海風の匂い、夕暮れの光、街角で流れる古い歌―どこか懐かしく、まるで自分の家族を見ているような親近感を覚えます。重いテーマを扱いながらも、決して悲しみに沈まず、温かい希望を感じさせるトーンが印象的です。

演技・キャストの魅力

寺尾聰は、老いとともに失われていく自我を繊細に表現しながら、音楽を通じて再び“生きる力”を取り戻す姿を圧倒的な存在感で演じています。認知症の症状を誇張せず、静かな表情や間の取り方で「人間の尊厳」を伝えるその演技はさすがです。
松坂桃李は、父の変化を受け入れられずにもがく息子を、実直かつ柔らかく演じています。父への苛立ちと愛情が交錯する複雑な心の動きを丁寧に描き出し、観客の感情を自然と引き込んでいきます。
松坂慶子は、家族を見守る母としての温かさと包容力を体現。物語の中心に“穏やかな母のまなざし”があることで、作品全体がやさしい光に包まれています。

まとめ

私がこの映画を観て感じた事は、父親が認知症になるという現実を中々受け入れることが難しい家族が落ち込んだり、時にポジティブな様子がリアルに描かれていました。また認知症になり色々なことを忘れてしまったりできていた事ができなくなっていっても「本人らしさ」が失われる訳ではなく、周りのサポートがあれば「本人らしさ」は続けていける事、記憶はなくなっても感情は残っている事、本人の大好きな歌を歌っている時は生き生きとした表情をしている場面が描かれていて、とても印象に残りました。

認知症について考える事のできる映画になっていると思いますので、ご興味のある方は是非観てみてください。


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