福祉をテーマにしたおすすめ映画④「ファーザー」

洋画

🌟 おすすめ度

感動度 ★★★☆☆ 記憶の混乱や家族の葛藤に胸を打たれます。
分かりやすさ ★★☆☆☆ 時間軸や視点が複雑で少し戸惑いますが、本人の体験している世界に引き込まれます。
リアリティ度 ★★★★☆ 認知症の描写はとてもリアルで、介護や家族の現実をリアルに感じられます。
総合おすすめ ★★★★☆ 心に残る演技と深いテーマ。感情的に揺さぶられる作品です。

※簡単なあらすじや感想を含みます。ネタバレを避けたい方はご注意ください。

■はじめに

Amazonプライムで観ることの出来る「ファーザー」について紹介したいと思います。

「自分の記憶が信じられない」—その恐怖と孤独を、観客自身が体感するように描いた映画『ファーザー』。本作は、認知症をテーマにしたヒューマンドラマの傑作でありながら、心理サスペンスのような緊張感も持つ異色の作品です。
主演のアンソニー・ホプキンスが圧倒的な演技で老いと記憶の崩壊を演じ、観る者の心を揺さぶります。認知症の“当事者の視点”で描かれた本作は、家族や介護を経験した人にとっても深く響く一本です。


■作品紹介

『ファーザー』は、フランスの劇作家フロリアン・ゼレールの舞台作品を原作に、本人が自ら映画化した作品です。
2020年に公開され、主演アンソニー・ホプキンスと共演オリヴィア・コールマンが父娘を演じます。
本作は第93回アカデミー賞で 主演男優賞(ホプキンス) と 脚色賞 を受賞。演技、脚本、構成のすべてが高く評価されました。

監督のゼレールは、あえて観客を「認知症の本人の視点」に立たせる構成を取り、混乱する現実をそのまま体験させます。
登場人物や部屋の様子が微妙に変化することで、「何が本当で、何が記憶なのか」が曖昧になり、観る人も次第に主人公アンソニーと同じ世界に迷い込むのです。


■あらすじ

ロンドンのアパートで暮らす老人アンソニーは、知的で誇り高い元エンジニア。
しかし最近、時間の感覚があいまいになり、娘アン(オリヴィア・コールマン)の顔や言葉さえも混乱していきます。
アンは父を支えながら介護施設を検討しますが、アンソニーは「自分は大丈夫だ」と強く拒絶します。

物語が進むにつれ、観客はアンソニーの目を通して“変化する現実”を体験します。
昨日と今日で部屋の壁紙が違う、娘の夫が別の俳優に変わる、誰が誰なのか分からない——。
それらは「認知症による記憶の断片化」であり、観客自身がその混乱を追体験する仕掛けなのです。

最終的に、アンソニーは現実と幻想の境を失い、まるで子どものように「ママ、ママ…」と泣く。
その姿は痛々しくも美しく、「人間とは何か」「記憶とは何か」を深く問いかけてきます。


■作品の魅力

『ファーザー』の最大の特徴は、「観る人に疑似体験をさせる」構成です。
通常の認知症映画は家族や介護者の視点で描かれることが多いですが、本作は徹底して本人の主観。これにより、観客は“理解する”のではなく、“感じる”ことを求められます。

映像構成、照明、音響までもが巧みに設計されており、何気ない部屋の変化が恐怖にも感動にも変わる。映画的技法の完成度は極めて高く、心理的なサスペンスとしても一級品です。

そして最後に訪れる“涙のクライマックス”は、介護を経験した人にとっても忘れがたい瞬間。
観終わったあと、きっと誰もが「記憶がなくなっても、人は愛されている」と感じるのではないでしょうか。

■感想

『ファーザー』は単なる“認知症映画”ではありません。それはまるで、観る者が「認知症という迷路」に入り込み、出口を探すような体験型の映画です。

私がこの映画を見て感じたことは、認知症当事者はこんな感覚の中で生きているのだと正直驚きました。認知症に関する勉強もしてきましたし、認知症当事者とも関わりをもってきましたが、本人の体験している世界はこんなにも混乱しているのだと改めて気付かされました。

認知症の特徴である記憶障害、見当識障害、失行などの中核症状を表現しており、見ている側も本人が体験している世界観を感じることの出来る作品だと思いました。

アンソニー・ホプキンスの演技も認知症を抱える高齢者を見事に演じていますので、ご興味がある方は是非観てみてください。

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