【実践編】中核症状やBPSDが現れたらどうしたらいい?実際にできる具体的な対応法を考えてみよう。パート2

福祉の話

はじめに

「何度も食事を要求する」「家に帰りたいと繰り返し言う」等、家庭や介護の現場でそんな場面に戸惑った経験はありませんか?前回の実践編のパート2として今回も実際にできる具体的な対応法を考えて見たいと思います。

再度お伝えしますが、介護する側からすると理解・対応が難しい行動かもしれませんが、”認知症だから仕方がない”というわけではありません。認知症高齢者のBPSD(行動心理症状)は本人からのSOSかもしれないという理解が大切になってきます。

この記事では中核症状やBPSD(行動心理症状)が家庭や介護の現場で起こった時に出来る実践的な対応のコツを場面に分けて紹介します。

事例をもとに考えてみよう

【ケース①】何度も食事を要求する。

食事を食べたのにもかかわらず、何度も食事を要求するのは認知症の典型的な症状の一つです。これは、認知症の中核症状の記憶障害が起こり食事を食べたこと自体を忘れてしまっているために起こります。その為、いくら介護者が「さっき食べましたよ」と伝えても「食べていない」と言い張ります。ひどくなると「ご飯を食べさせてもらえない」と周囲に訴えるようななったりして対応する側も疲れてしまいます。

まず対応を考える前に本人の気持ちと、対応するあなた側の気持ちを考えてみましょう。

💕本人の気持ち

・ご飯を食べてたか覚えてない。

・お腹がすいてるからご飯を食べさせてもらってない。

・家の人(職員)は私にご飯を出してくれないのかしら。

💕あなたの気持ち

・さっきご飯を食べたばかりなのになんで「食べてない」って言うの?

・「食べましたよ」何度伝えても分かってくれないからイライラしてしまう。

それぞれの気持ちを理解した上で、どのような対応がいいのか?考えていきたいと思います。

NGな対応

叱ったり、無視したりは、逆効果

「さっき食べたばかりでしょ‼︎」と強い口調で叱ったり、返事をせずにやり過ごしたりするのは、逆効果です。本人は「ご飯を食べていない」「お腹がすいた」と思っているので、あなたがそれを否定するような態度を取れば、被害者意識を強くするだけです。こうなると周囲の人に「ご飯を食べさせてもらえていない」と言いふらしたり、食べ物にさらに執着するようになったりします。

良い対応

食べ終えたことを、視覚に訴える

要求されるがままに食事を出すことは難しいと思うので、「すでに食事をした」事を納得してもらう工夫が必要です。例えば、食後の食器をすぐに片付けない方法があります。食後すぐに食器を片づけてしまうと、食事をしたことを忘れやすくなりますので、しばらくは本人の前に空いた食器を残しておくのも方法です。そうすると、自分が食事をした事を目で見て認識しやすくなります。 それ以外にも表を作成し食事が終わったらシールを貼って視覚で納得してもらう方法もあります。

書籍「カラー図解 介護現場ですぐに役立つ!タイプ別対応でよくわかる認知症ケア:熊谷頼佳」は、今回紹介した“何度も食事を要求する”や“家に帰りたいと繰り返し言う”といった症例別に、図解+支援方法が分かりやすくまとまっています。↓

私の体験談として

私が施設で働いている時も、食事を食べ終えた直後に「ご飯はまだ?」等、訴えてくる入所者は何人もいました。認知症の勉強をするまでは、それこそ「さっき食べましたよ」「次は夕飯なので待っててください」等、本人の訴えをあまり聞き入れない対応をしていた時期もありました。そうした対応を続けていると他の入居者の食事に手を出すようになったりするなど悪循環になったこともありました。認知症の勉強をしてからは、本人の立場になって考え認知症の中核症状で「食べたこと自体」が記憶から抜け落ちてしまっているので、どのような対応が本人にとって望ましいのか考えるようになりました。先ほどの良い対応であげた「食べ終えたことを視覚に訴える」対応ですぐにお膳を下げず視覚に訴える対応をすることもありましたし、それでも納得されない場合は、食事をもう一度提供する訳にはいかないので、軽食(カロリーの低いおやつ等)をお出しする方法も実践していました。軽食であっても本人の訴えに少しでも答えることで納得していただけることもありました。

【ケース②】「家に帰りたい」と繰り返し言う(帰宅願望)

認知症になると、自分がいる場所や置かれている状況を理解したり記憶したりすることが出来にくくなります。それに加えて初期〜中期の時は自分の物忘れの症状を自覚していて、将来の自分に対する不安を抱くようになります。その心細い気持ちから「家に帰りたい」と訴えるようになります。また過ごしている場所や生活している場所の居心地が悪かったり、何かストレスになっていることがあると帰宅願望は強くなります。その為、自宅にいたとしても、その場所に不満があれば「家に帰りたい」と訴えることもあります。

ここでも、対応を考える前に本人の気持ちと、対応するあなた側の気持ちを考えてみましょう。

💕本人の気持ち

・ここはどこ?

・ここは居心地が悪い。落ち着かない。

・こんな所にいたくない。家に帰りたい。

💕あなたの気持ち

・ずっと住んでいた自分の家(居場所)なのに、なんで分からないの?

・自分の家なのに、なんでどこかに行こうとするの?

・「ここにいて」って何度言っても聞いてくれなくて疲れる。

それぞれの気持ちを理解した上で、どのような対応がいいのか?考えていきたいと思います。

NGな対応

帰りたい人に「帰れません」は、禁句

「家に帰りたい」と訴える本人に、「帰れませんよ」と言ったり、無理やり体を押さえて止めたりするのは良くない対応です。不安な気持ちが強くなって、暴れたり、外に急に飛び出してしまったりすることがあります。また、言葉で「あたなの家はここでしょ」「ここにいましょう」と説明して引き留めるのも✖️。本人は帰れないことに納得できていないのですから。

良い対応

気持ちを受け止め、その場から離れ外に出てみる

今、自分の置かれている状況に不安や居心地の悪さを感じ「今すぐにでも家に帰りたい」と思っています。その気持ちを落ち着かせる為には、一度その場から離れるのが、もっとも効果的です。「一緒に帰りましょう」と言って外出してみましょう。「家に帰れる」という安心感から、気持ちも落ち着いてきます。その後、元の場所に戻っても、納得してくれることも多いです。また一緒に外出するのが難しい場合は「もう遅いから明日にしましょう」と伝えながら本人の「家に帰りたい」という気持ちを受け入れる対応を心がけるようにしましょう。

それ以外で「帰宅願望」を和らげるには?

どんなに頑張っても、本人が納得がいく対応を行うのは困難な場合もあります。たとえ本人が自宅にいたとしても「家に帰りたい」と訴える時もあると思います。つまり今の環境や介護に満足していないという気持ちの表れなのです。今いるこの場所が自分にとって落ち着くことの出来ない環境であったり、周りの人が自分にとって嫌な存在だったら誰でも、その場から離れたくなるものだと思います。その為、今いる環境を少し変えてみることや側にいる人の対応の仕方を変えてみたりすることで、その場所が本人にとって居心地の良い満足できる環境に整えるのも大切になってきます。

私の失敗談として

施設で働いていた時の話です。70代のAさんというおじいちゃんがいました。その人は大手企業の役員をされていた方で、とても威厳のある方でした。その方が認知症が進行し一緒に住んでいる妻が大病を患い入院生活を送るようになり私の施設に入居されました。日中は他の入居者と食事の時などお話ししたりして穏やかに過ごされていましたが、夕方になると部屋から出てきて施設の玄関近くにあるスタッフルームに「家に帰るから」と尋ねてきました。家に帰っても誰もいなく1人で生活するには食事や家事ができる人がいない為、帰らせる訳には行きませんでした。県外にいる娘さんからも「父をお願いします」と言われていたこともあり「家には帰れません」「今日はここに泊まってください」と、どうにか納得してもらおうと必死に対応をしました。本人からしてみれば、「何故、ここにいるのか」「なんで自分の家に帰らせてくれないのか」が認知症の進行もあり理解できていません。それなのに、まだ関係性も出来ていない職員から「家には帰れません」と言われたので納得がいかず、かなり激昂され自分1人では対応が出来ませんでした。そこで上司を呼んで、説明をしてもらったのですが、それでもてもなかなか納得してもらえず最終的には娘さんに連絡し本人に今の状況を説明してもらうことで、どうにか本人も落ち着かれ、ことなきを得たことがありました。しかし根本的な解決にはならず翌日にも夕方になると同じように訴え、その都度娘さんに連絡し対応してもらうしか出来なかった苦い経験があります。

結局、その方は娘さんのいる県外の施設に入居され定期的に家族と会える環境に移られたことで、落ち着いて生活ができるようになったと聞いています。

今考えると急に自分の知らない場所に入居させられ、本人にとって部屋も職員も落ち着く環境ではなかったのだと思います。その時に本人にとって過ごす物理的環境や周りの職員等の人的環境が認知症の人にとっては、とても大切なんだと感じた経験です。

最後に

この記事を読んでくださった皆さまにお願いしたいのは、認知症の人を私たち視点で捉え対応していては認知症の人の表情は硬いままで穏やかに過ごすことは出来ません。そうではなく、私たち支援者側の「見方や捉え方」を変えることが認知症の人が安心して穏やかに過ごせるようになることに繋がることを少しでも理解していただければと思います。

映画を通じて「本人の気持ち」を感じて見ませんか?下記の記事で紹介する「認知症をテーマにした映画」を観て、支援者としての視点をより深めてみませんか。↓

https://hara-hiko.com/category/films-on-social-welfare/

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