・認知症の主な原因疾患
・中核症状とは
・認知症ケアの歴史
・筆者からのお願い
・最後に
前回の記事で「認知症」は病名ではなく、脳の病気による認知機能の低下によって引き起こされる状態の総称とお伝えしました。
そこで今回は認知症について主な原因疾患や中核症状、認知症ケアの歴史についてお伝えしますので参考になればと思います。
■認知症の主な原因疾患
・アルツハイマー型認知症
・血管性認知症
・レビー小体型認知症
・前頭側頭型認知症
これ以外にも認知症の原因疾患はおよそ70種類以上あると言われていますが上記の4つの原因疾患のことを四大認知症と言います。また、その中でもアルツハイマー型認知症が全体の67.6%を占めています。
認知症の主な原因疾患についてはこちら↓

そこで今回は認知症の中でも一番多いとされているアルツハイマー型認知症の中核症状についてお伝えしていきたいと思います。
■中核症状とは
まず「中核症状」って何なのかをお伝えします。
認知症は、加齢による脳の病的な変化や、病気などによる脳の障害によって脳の細胞が壊れることで発症します。 壊れてしまった脳の細胞が担っていた役割が失われることで起こる症状を「中核症状」と言います。
アルツハイマー型認知症の主な中核症状は、記憶障害、見当識障害、判断力の障害、実行機能障害、失認、失行、失語があります。中核症状については、別の記事で紹介したいと思います。




■認知症ケアの歴史
認知症の原因疾患や中核症状をお伝えしたところで、ここからは少し認知症ケアの歴史についてお伝えしたいと思います。
【1960年以前】
認知症が昔、痴呆と呼ばれていたことをご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、1960年以前は痴呆ではなく痴狂(ちきょう)と呼ばれていました。その当時のケアの内容は私宅監置室(座敷牢)主に精神障害のある人を自宅や敷地内の物置などに監置することが認められていました。ケアは基本的には家族にゆだねられていて認知症は「恥ずかしい病気」「人に迷惑をかける病気」ととらえられていました。家族は何の支援を受けることができない状況の中でその存在を隠し罪悪感を抱きながら生きてきた人も多かったのではないかと思われます。自宅でケアできない方の選択肢は精神病院というのが一般的でしたが、収容と隔離が目的で、治療やケアとよぶには程遠いものでした。また1908年に痴狂から痴呆へ名称変更されました。
【1960年~1970年代】
この時代は、ケアなきケアの時代と言われていて、認知症の人のことを何も分からなくなった人と考え、認知症のケアについての明確な理念や方向性もなく、場当たり的なケアが行われていました。高齢者のケアは、食事・入浴・排泄といういわゆる3大介護を中心とした身体介護が行われ、認知症の人の不可解な言動を、介護を困難にさせるやっかいな行動と考え、「問題行動」と捉えていました。認知症高齢者に対する社会的支援策は殆どなく、在宅介護が困難になると精神病院への入院が一般的。施設では、同じ時間に一斉にケアを行うという大規模な集団対応的なケアが行われ、介護者は、能力を失った人の「世話をすること」が務めであると考え、本人の人格を否定したり、行動や言葉を抑制し、投薬や安易な抑制などが中心のケアが行われていました。また1972年に発刊された「恍惚の人」(有吉佐和子)で認知症が世間に広まりました。
【1980年代】
この時代はアクティビティ中心の時代・認知症ケア模索の時代と呼ばれていて、施設などでは、盛んに音楽や絵画、書道、工芸、園芸などさまざまなアクティビティプログラムが用意され、ボランティアなどの力も借りながら、施設のなかでさまざまなアクティビティが行われるようになっていました。身体介護中心のケアからは少し前進しましたが、さまざまなアクティビティプログラムを個人が選択するのではなく、用意したプログラムに利用者を合わせるといった現状。認知症ケアは、身体介護・問題対処型ケアが中心でしたが徘徊、不潔行為などにも、個々の状態に応じたそれぞれの背景や意味があることに気付くようになり、抑制や隔離で問題を封じ込めようとするだけの対応から、個別の対応を模索する時代へと入っていきました。
【1990年代】
この時代は新しい認知症介護の醸成期と呼ばれていて、多くの実践者や研究者がスウェーデンやデンマークの尊厳を支える「個別ケア」を学びながら、グループホームや宅老所の取組みが本格化し始め、わが国の認知症ケアの水準を高めてきました。大型施設にもユニットケアが取り入れられ始め、パーソンセンタードケアが紹介され始めました。認知症の人の内面にあるものを推察しながらケアすることが一般化し始め、役割のある生活や尊厳のある生活などQOLに目を向けたケアが模索され始めてきました。
【2000年以降】
大規模ケアの反省の中から、グループホームやユニットケアなどが認知症ケアに有効であると言われ始めました。イギリスの心理学者であるトム・キットウッドは、これまでの介護者中心のケアに対し、これからのあるべきケアの姿を「その人を中心に据えたケア(パーソン・センタード・ケア)」という言葉で表し、「認知症の人の声に耳を傾け、人生の物語を知りその人らしく生きていくための支援をすることがこれからの認知症ケアのあるべき姿である」ことを提唱し最近ではこの考え方が認知症ケアの主流になっています。また2000年介護保険法施行(措置から契約へ)され、2004年「痴呆」から「認知症」へ名称変更されました。
今回なぜ認知症の歴史をお伝えしたかというと、昔のケアは良くないと言う訳ではなく、その当時は実施していたケアが良いと思って取り組んでいた。しかし昔は認知症への理解や研究が進んでいなく、認知症の人や家族にとって生活しづらい時代でした。時代と共に色々なケアを試みて研究も進んだ結果、本人を中心に据えたケアが良いとなってきました。私達は時代を知り同じようなことを繰り返さないよう本人を中心に据えた関わりや認知症ケアを行っていく必要があると思います。
■筆者からのお願い
ここでこのブログを見てくださる方に知っておいて欲しいことがあります。私の周りや職場にもいるのですが認知症が進行したことを「認知が進んだ」「認知がひどくなった」という人がいますが、この言い方は間違っています。認知とは‥人間が外界にある対象を知覚した上で何かを判断すること。簡単にいうと 物事を理解して判断するための心の働き のことです。「認知が進んだ」という言い方だと…「認知する力が高まった」ように聞こえてしまうので本来の意味と逆になってしまいます。なので、専門的にも日常的にもあまり正しい使い方ではありません。このブログを見てくださった皆様には正しい理解と使い方をお願いできればと思います。
■最後に
最後に2023年6月14日、認知症の人が希望を持って暮らせるように国や自治体の取り組みを定めた「認知症基本法」が参議院本会議で全会一致で可決・成立し2024年1月1日施行されました。 認知症に関する初めて法律ができたことで、国や自治体が計画を作って、しっかり進めていくことが求められています。これにより「本人中心の支援」「地域での共生」「家族も含めた支援体制」の大きな柱ができ認知症の人が、安心して自分らしく暮らせる社会をつくるための取り組みが法律として明記されました。これをきっかけに今以上に認知症の人が自分らしく住みやすい社会になることを願っています。
※参考文献・資料 認知症介護基礎研修標準テキスト、認知症介護実践者研修標準テキスト
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